7/5京浜製鉄革新懇「パワハラのない職場づくりを」シンポの概要(3)
京浜製鉄革新懇の主催で7月5日(土)に開催された「パワハラのない職場づくりを」シンポジウムの概要を順次掲載しています。
第3回は、労働行政に携わっておられる、全労働神奈川支部書記長の川口氏の報告の概要です。
パネリストの報告要旨(3)「パワハラが起きるメカニズムと労働行政からみた実態」
全労働省労働組合神奈川支部 川口修氏
管理手法の変更で会社の雰囲気が一変
ある企業で、年間業績管理を四半期ごとにし、部門を細分化したうえで部門ごとの管理へと変更した。そして部門ごとに目標設定し、社員ひとり一人の数値目標となっていく。それによって、同僚がトラブルにあって困っていても、手伝ったら自分の数値が落ちると見て見ぬふりをしはじめる。人間関係が希薄になっていった。
部門管理者は自分のところの成績があがらないと、その責任はひとり一人の部下にあると見るようになる。管理者の視点は「お前のせいだ」と変わっていく。それが社員への叱責やサービス残業へつながっていった。そのうち退職者がではじめ、会社は人員を補充するが同じようにパワハラで辞めていき悪循環に陥る。一時的には利益をあげたものの、会社のなかの空気はゆがんだかたちのまま進んでいる。
パワハラが起きるメカニズム
短期的な業績管理 株式市場の活性化と称し短期の利ざやを求める投資家が急増した。そのため企業は高い株価を保持するために短期で利益をあげなくてはいけないという状況に追い込まれていく。
目標管理 それが次に目標管理としておりてくる。会社は組織としての目標をたて、数値の個人目標となっておりてくる。例え装置の故障など本人責任でなくても数値が上がらなければ、目標達成していないとなってしまう。数値による目標管理というものはパワハラがおこるメカニズムに密接に関連しているのではないか。
管理の個別化 管理する側からすると処遇と指導の使い分けをする。ちゃんと数字をあげたものには処遇をよくするが、そうじゃないと叱咤する。これが個別管理の方法でこれがまたパワハラにつながる。つまり組織ではなく「お前が」という形になってしまう。
ピラミッド型の組織構造のもろさ パワハラの加害者は直のユニットリーダーであったり係長であったり、主任だったりする。しかし、そういう人たちも上から追い立てられている。お前たちが下をもっと絞めないからと、締め付けられ、それがその下にまた波及してしまう。
雇用形態の違いが「身分差別」に 非正規労働者が増え、それが職場のなかで身分関係みたいなものを生む。派遣労働者を一人の人間としてみるのでなくて、「派遣さん」等と呼び出しはじめると、相手を人格をもたない存在としてみてしまう。そうするとパワハラが当然起きる。こういう「身分制度」を国が率先してつくってきたことは大きな問題だ。
労働組合の役割の重要性
パワハラの原因の分析を経営側にやらせていく、休業や鬱病になった原因を確実に分析させることが必要。職場の問題で病気にかかったら労災申請すべきだ。そのために労災保険がある。勇気をもって申請した人をみんながフォローする、みんな支えているということを、勇気をもって立ち上がった人に伝えていく。
以上