神奈川のリストラ反対運動の歴史とルネサスリストラ(3)
「新かながわ」6/8号〜6/22号に掲載された岡本一 氏(NPOかながわ総合政策研究センター・理事)執筆の記事、「神奈川のリストラ反対運動の歴史とルネサスリストラ」を3回に渡って転載します。
第3回目は、特にリストラ合理化・解雇から雇用を守る世界のたたかいと日本のたたかいの到達点と課題について述べられています。ぜひ最後までお読み下さい。
リストラ合理化から雇用を守る世界のたたかい
岡本 一(NPOかながわ総合政策研究センター・理事)
労働者の権利闘争の歴史
資本主義の発生以来、労働者は資本家の搾取とたたかい、多くの権利を獲得してきました。当初は犯罪であった労働組合を作ることやストライキなどの争議行動も、権利として認めさせ、法律を作らせました。そして、多くの曲折を経て、特にヨーロッパを中心に、労働組合を社会の重要な構成組織として認めさせ、企業のリストラ等についても、事前に労働組合に公表させ、可能な限り同意を得る、どんな場合でも雇用を維持させることを、企業の社会的責任として認めさせるまでになっています。ただし、同一企業で雇用を保障するということではありません。
日本でも最近ではCSR(企業の社会的責任)がいわれ、多くの企業で企業倫理憲章など作っています。さらに、国連グローバルコンパクトに参加する企業も増えてきています。こうした動きに対して、ヨーロッパの労働運動は、企業任せでは不十分だとして、労資の協約、多国籍企業と国際的な枠組みで協約化するたたかいを戦略的に進めてきました。下請け・関連企業も含め雇用を守らせる、均等待遇、環境への配慮、ジェンダー平等などを柱とした協約が結ばれています。
21世紀にはすべての国ですべての人々に、ディーセントワーク(人間らしい働きがいのある労働)を保障することが可能であり、実現させようというのが世界の流れです。基本は、企業には高度な経営戦略・判断があっても、労働者の雇用も含め、「社会的責任」を果たさなければならないということです。
日本のたたかい 解雇4要件の確立
日本では、三井三池炭鉱の争議の教訓から、大量解雇は企業にとっても大変な負担となるということで、以後、露骨な大量解雇はほとんどなくなりました。しかし近年、国鉄や社保庁、JALやIBM、非正規労働者など大量解雇が行われています。また、企業と一体化した労働組合の協力の下に、希望退職という名の大量解雇も絶え間なく行われてきました。しかしそうした中、様々なたたかいによって大きな成果も上げてきています。整理解雇の4要件を確立させ、活用できるいくつかの法律も制定させました。
企業は再就職に責任を持たされる
66年に作られた雇用対策法は、活用できるし、活用しなければならない法律です。企業がリストラで大量の労働者の削減を行う場合は、労働者の再就職に責任を持たなければならない。国はその計画が実効性があるかどうかを厳密に調べ、実効性がない場合はその計画を認めない。そして自治体は国とあいまって、地域の雇用を守らなければならない。ということが書かれています。また第3条には「労働者は…職業生活の全期間を通じて、その職業の安定が図られるよう配慮されるものとする」とも書かれています。
次世代育成支援対策法、育児・介護休業法なども十分使える法律であり到達点です。
(「新かながわ」2014年6月22日号掲載。終)