コラム

2014年9月5日

正規雇用労働者のたたかいを描いた「続・時の行路」に感銘


続・時の行路-2 [更新済み] 「年越し派遣村」が社会問題となり、NHKなどが「ついに労働者が立ち上がりました」と報じた「いすゞ自動車裁判」(2009年)へと、非正規雇用労働者を物の様に扱う企業に対し立ち上がった人々のたたかいを報じたマスコミも、今はそうした裁判などほとんど取り上げようとしていない。

 しんぶん「赤旗」に連載された「続・時の行路」(田島一著)が、8月中旬に新日本出版社から単行本として出版された。もちろん小説でありフィクションであるが、その内容はほとんど現実に近く、それだけに極めてリアルである。いすゞ自動車非正規切り裁判に支援者の一人としてこの6年間携わってきて、この本は本当に多くの方に読んでいただきたいものだと切望している。

 いま、多くの労働争議に関わる裁判が不当な判決を受けている。日産自動車といいJALといい、裁判官は「法の番人」という看板を返上してほしいと思うほど、まったく企業寄りの姿勢をあからさまにして恥じない判決の連発である。

 「続・時の行路」は、東京高裁での最大のポイントである、社長の証人調べの攻防を描く。会社の生産計画を巡り、本社総務部長の証言と最高責任者である社長との見解が全く食い違っているにもかかわらず、T地裁は部長の証言のみを採用し原告敗訴の判決をだした。高裁では社長を証人として呼び事実を明らかにしたいというのが原告の主張である。これに対し、裁判長の判断は必要なしというものであった。

「なぜですか、高裁はなぜ真相を解明しようとしないのですか。裁判所の役割を果たそうとしないのですか」という弁護士の振り絞るような問いかけを無視して退場する3人の裁判官の姿と、「俺たちが叫び続けたのは無駄ではなかったと、笑える日がくるまでたたかいつづけるぞ」という主人公のシーンで小説は終わって行く。

 反原発のたたかいといい、集団的自衛権行使容認を許さぬたたかいといい、また、ブラック企業をはじめ、若者を使い捨てにする雇用の問題といい、社会の不条理を正す大きな流れのなかにこの主人公もまた敢然として立っていることに爽やかな思いを感じながら本を閉じた。

労働問題研究家 N生

続・時の行路宣伝2